No11

悪行は判断システムの狂いによって生じる

世の中には悪いことを平然と行って、恥じるこ とのない人たちが大勢いますが、なぜこのよう な人間が出来上がってしまったのかを考えて みましょう。

これらの人たちは、「病変」によって精神の内 部にある善悪の判断システムが狂ってしまっ たのです。

このシステムが一度狂ってしまうと、元の状態 に回復することは困難になってしまいます。

私たちから見ると、明らかに異常な行動を取っ ている人間も、その人間の立場になって考え ると、「正常な判断」を行う努力をくり返してい るのです。

「ほかの奴はどう思うか知らないが、少なくとも 俺は……」とか、「もちろん悪いこととはわかっ ているけれども、この場合仕方がないんだ」な どと言うような人の場合、「結局のところ、自分 の考えは正しい」などと考えて自分を納得させ ているのです。

その人の精神は、すでに善悪について判断不 能状態におちいっているのです。

この人たちが本当に「悪いことをやっている」 と思えば、その行動はただちに中止されるは ずです。

以前悪いことをしていた人が悔い改めて善人 になった場合、「一度破壊された判断システム がリフォームされた」と考えてよいでしょう。

善悪の判断システムは、無意識の中で作られ 、たまに「思考」という形で意識にのぼってきま す。

意識はシステムの全体像を理解することがで きないので、システムが正常なのか異常なの かを見きわめるのは難しいことです。

異常を意識が気づいた場合、「意識が無意識 に働きかける」という形で修復作業を行います が、無意識をコントロールすることは簡単には できないので大変な努力が必要です

システムの異常を自分で気づく場合は、ひどい 失敗をして真剣に反省した時などです。

外側からの刺激がないのに異常に気づくケー スはまれです。

外側からの刺激としては、他人から注意され て気づく場合や、強制的に素行を直されてよく なる場合などがあります。

異常になったシステムが正常に戻った場合、 無意識の中では、古いシステムの破壊とリフォ ームが同時に行われています。

古いシステムが残ったままだと、古いシステム がリフォームを悪と判断して妨害してしまうの です。

この場合のリフォームとは、破壊されたシステ ムの材料を組み立て直すことです。

システムの材料とは、無意識や意識にたくわ えられている「自分の行動に影響を与える記 憶のかたまり」のことです。

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