No29
海に碁盤を並べてみると……
ところで、海にこの碁盤を並べるとしたら、いく つ並べられるでしょうか?この碁盤は8路のミ
ニ碁盤ですから10センチしかないとしましょう。
1メートル4方に、100個並べることができます。
1キロ4方には10の8乗個並べられます。
海の総面積は(3.6×10の8乗)平方キロメート ルです。
平均深度を4キロとして計算すると、体積は(1 4.4×10の8乗)立方キロメートル。
碁盤を置くスペースが10センチ立方必要だと すると、(14.4×10の20乗)個収納することが
できます。
これをさらに1兆年作動させますと、(7.2×10 の37乗)通りのパターンを実行することになり
ます。
これだけややこしい数字をお見せすると、「こ んなことが生命の発生とどんな関係があるの
か?」と怒り出す人がいるかもしれません
ところで、生命はアミノ酸によって作られている ことはすでに述べましたが、アミノ酸のかたま
りがタンパク質になり、さらに生命になるため には、ある特別な組み合わせを作る必要があ
ります。
そこで、この碁石の並びパターンの一つが生 命を発生させるアミノ酸の組み合わせパター
ンと同じと仮定します。
実際にはこんな簡単なことで生命が発生する わけはありませんが、これはあくまでも確率に
対するイメージを明らかにするための思考実 験と思ってご了承してください。
このような条件のもとで、1兆年間に生命が発 生する確率は、約(5.7×10の52乗分の1)」と
いうことになります。
「生命を構成するタンパク質を作るのに10セン チ立方などと巨大なスペースが必要なわけが
ない。
実際には数ミリミクロン立方のスペースで充分 なのではないか?原始の海の中で生命を作り
出す素材はもっと多かったはずだ」このような 考え方はおそらく正しいでしょう。
それでは碁盤をもっと小さくしてみましょう。
0.01ミリ立方に縮小したらどうでしょうか?この サイズですと10センチ立方に、10の12乗個収
納することができます。
この場合の1兆年間に生命が発生する確率は 、約(5.7×10の40乗分の1)ということになりま
す。
すでに述べたとおり、実際にアミノ酸からタン パク質が合成されるプロセスは、碁石を並べ
るのとは比較にならないほど複雑です。
このことから、「わずか数億年の間に、海から 偶然に生命が発生した」と考えるのは、かなり
無理があることがわかります。
それなら、もっと小さい単位で考えたらどうなる でしょう。
0.01ミリというのは10ミクロンのことですが、細 菌の平均的な長さは1ミクロンです。
このくらい小さければどうでしょうか?
先ほど得られた数値に、さらに縮小したことに よって可能になった個数、10の3乗を割ってみ
ます。
(5.7×10の37乗分の1) これは何かというと、 海全体が細菌ほどの大きさの碁盤ですき間無
く埋まった状態で、1兆年間に生命が発生する 確率です。
このレベルではまったく問題にならないことが わかります。
細菌の100分の1の長さのウイルスにしたとこ ろで、これをすき間無く埋めて同様の計算をし
ても、(5.7×10の31乗分の1)まだまだ確率と してはお話にならない数字です。