No30
生命発生の可能性を宇宙に求める
生命を誕生させる確率の分母を増やすあては 、もはや地球上にはありません。
ということは、「宇宙空間が生命発生の場であ る」 という仮説を取り上げないわけにはいき
ません。
碁盤などの思考実験ではなく、実際に生命を 誕生させるための確率数を考えてみます。
近ごろ「狂牛病」という病気が話題になりまし た。
病気の原因は「異常プリオン」と呼ばれるタン パク質分子です。
これが細胞組織に入ると、自己増殖し正常な タンパク質を病変させ、最終的には生命体を
死に追いやってしまうという恐ろしい病気です 。
しかし、タンパク質の1分子に増殖能力がある ということは、従来の生命観から考えると画期
的な発見であったと言えます。
生命の最小単位をウイルスと仮定すると、最 低でも数億単位の原子量を想定しなければな
らず、アミノ酸の組み合わせは偶然では絶望 的な回数になってしまいます。
それがタンパク質1分子を想定すればよいこと になると、試行回数を大幅に減らすことができ
ます。
タンパク質を作っているアミノ酸の中で代表的 なものは22種類で、一つのタンパク質の中に
あるアミノ酸の平均数は300です。
厳密には組み合わせの順番も重要なのです が、それを考えると無限大に近い試行回数に
なってしまいます。
そこで、単純な組み合わせの結果のパターン だけを考えると、(22×10の300乗)ということ
になります。
この数値もまだ大き過ぎるので、アミノ酸数60 個程度の最小単位のタンパク質の組み合わ
せパターンを前提として考えることにします。
このような小さなタンパク質であっても自己増 殖機能がある可能性はあります。
さらに、自己増殖機能の起こる組み合わせは 一つだけとは限りません。
ただし、現実の地球の生命は1種類の自己増 殖機能しか確認されていませんから、この組
み合わせが無数にあるものとは思えません。
以上のような条件を考慮して、10の120乗回の 試行回数で自己増殖可能なタンパク質が誕生
するものと仮定することにします。
この数値がきわめて楽観的なものであること は言うまでもありません。