No32

宇宙のどこかで発生した生命が、どのようにし て地球までやって来たか?

このような宇宙を想定すれば、確率論的に生 命が発生することは充分に可能です。

そこで次に問題となるのは、「宇宙のどこかで 誕生した生命が、どのようにして地球までやっ て来たか?」ということです

生命が地球で発生したと考えれば、1応問題 はないのですが、可能性は10の66乗分の1以 下です。

「複数宇宙」「異次元宇宙」を合わせた宇宙の 総数は10の61乗個。

惑星数は(1.6×10の85乗)個。

これを「超宇宙」と呼ぶことにします。

「生命がその発生した星にとどまって、他の惑 星に移動しない」と考えると、「超宇宙」全体に 地球みたいな星が10の210乗個点在している ことになります。

確率的には、「この宇宙」には地球以外に生 命がいる星はほとんどないということになりま す。

隣の宇宙に生命がいる確率も10の41乗分の1 です。

「生命現象は、宇宙で最初に発生した場所か ら徐々に広がりながら移動し、最終的に地球 にやって来た」と考えるほうが可能性が高いよ うに思えます。

ここで新たに問題になるのは、「それでは、ど のようにして移動したか?」ということですが、 この場合、「自然現象で広がった」可能性と「 自力で広がった」可能性が考えられます。

まず、自然現象の可能性について検討してみ ましょう。

生命体といいますと、鉱物などと比較してか弱 い印象を与えます。

特定の環境でないとその形を維持できないこ とがそのような印象を与える理由ですが、特定 の環境といっても、生命体の種類によっては かなり幅があります。

現在知られている増殖可能な有機物質の最 小単位は「狂牛病」の原因物質であるタンパク 質「異常プリオン」です。

ウイルスの結晶などとくらべて分子構造が単 純なだけに、破壊を免れる確率は高いものと 考えられます。

そこで、このプリオンみたいなタンパク質があ る惑星で誕生したと仮定して、それがどのよう な手段で他の惑星に移動するかを考えてみま す。

考えられる唯一の方法は、「その惑星が何ら かの事情で破壊され、その破片の一部が他の 惑星に飛来した」場合です。

その破片にプリオンが付着していればよいの です。

最近、火星から飛来したと言われている隕石 の中から細菌の化石みたいなものが発見され たとNASAが発表しました。

生きた細菌が火星から地球に来る可能性は ほとんどありません。

プリオンクラスの単純な分子ならば、再活性可 能な状態で地球まで飛来する可能性はあるで しょうか?

この場合、プリオンは、惑星破壊の時の激しい 衝撃、惑星内部物質の流出による高熱と有毒 ガス、さらに宇宙空間放出後には真空と絶対 零度に近い低温にさらされ、惑星再突入時に は、再び空気摩擦による高温、大地に激突し た際には激しいショックに見舞われます。

もっとも、再突入してから海に落下すれば、シ ョックはかなり緩和されることでしょう。

しかし、これらの条件を考えた場合、いくら分 子の形態を取っていたにしても、無事に届く可 能性はほとんどないと言わなければなりませ ん。

プリオンが何らかの状況で岩石の内部に取り 込まれて、その状態のまま隕石となって飛行 する。

そして、その隕石がきわめて低い角度で惑星 に再突入して、比較的低速で海に墜落し、そ のショックで岩石が割れ、海に溶け込んだプリ オンが水分を得て再活性化する。

しかも、その海の成分はアミノ酸が豊富にあっ て、プリオンが増殖可能な状態だった。

この後、無事に届いたプリオンが進化して本 格的な生命に発達すればよいことになります。

このような、奇跡につぐ奇跡が起こり続ければ 、一応惑星間の生命移動は可能であると考え られます。

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