No33

自然現象による生命拡散説の欠陥

ここでさらにこの移動方法には不利な条件が あります。

惑星間を移動するのに時間がかかり過ぎてし まうという条件です。

隕石の状態になって飛行する場合、どのよう に考えても光速の千分の1以下のスピードでし か移動できません。

先ほどの例のように、火星から地球に移動す るくらいの距離ならば問題はありませんが、同 じ太陽系はいいとして、別の太陽系に移動す る場合、距離にして最低4光年見積もらなけれ ばなりません。

これが秒速3100キロくらいのスピードだと、到 着するのに4千年以上かかってしまいます。

惑星に隕石が落下し、惑星の1部が宇宙空間 に飛び散り、別の惑星に移動することは実例 がありますが、その程度のエネルギーではそ の太陽系を脱出することはできません。

仮に脱出できたものがあったとしても、無視し てよいほどのわずかな量でしょう。


本格的に移動するためには、惑星そのものが 破壊されるほどの爆発でなければなりません 。

仮に1惑星について100億年に1回爆発現象が 起こるとします。

すると、宇宙の平均年齢を150億年とすれば、 生命現象の発生した宇宙一つに対してたった 1・5回しかこの現象が起きないことになってし まいます。

宇宙年齢を1兆年とすると、2の100乗回この 現象が起こることになりますが、以上の仮定 は、100億年の時間内に1惑星から移動した生 命が別の生命発生可能な惑星に必ず届けら れるという条件で考えたものであり、実際には そのようなことが起こる確率はさらに低いもの と考えなければなりません

さらに、一つの宇宙に発生した生命現象を他 の宇宙に移動する方法も考えなければなりま せん。

「宇宙にはいたるところにブラックホールがあ って、その中に入りこめば簡単に別宇宙に移 動できる」とでも仮定しておかないと説明はつ きません。

ただし、この仮定を前提とすれば、ブラックホ ールには強力な重力で周りの質量を引きつけ る性質があるので、生命を宿した隕石を効率 よく収集するには都合はよいことになります。

No34生命の自力拡散の可能性

次に、「自力で拡散した場合」を考えてみましょ う。

地球を例に取ると、原始的生命から三十数億 年後に知的生命体が進化して、文明を持つに いたりました。

これを平均的進化速度と仮定します。

超宇宙の中の10の20乗個の惑星で単発的に 生命現象が発生し、その中の10の10乗分の1 程度の確率で文明を持つ生物が現れたとしま す。

一度生命が現れてしまえば、進化する可能性 は比較的高いものと思われます。

その中で宇宙旅行できるまで発達した文明が 「10の5乗分の1あったとします。

それでも10の5乗個の惑星が残ります。

この星の住民達が他の天体へ植民して行け ばよいのです。

現在の地球程度の科学力でも、理論的には5 0年くらいで別の太陽系に移動することは可能 です。

仮に100年で一つの星を植民したと仮定しても 、1000年で2の10乗、1万年で2の100乗、もし 文明が千万年続けば、2の10万乗の星を植民 することができます。

この数字は超宇宙全体の惑星を植民するの に充分な数です。

この間に技術はさらに進歩して、よりたやすく 移動できるようになっているでしょう。

超宇宙のどこかに地球よりも1000万年早く文 明化した惑星が一つあれば、それだけで宇宙 中を生命で満たすことができるのです。

以上のことから、「自然現象によって生命が移 動した」と考えるよりも、「自力で生命が移動し た」と考えるほうが可能性として高いことがわ かります。

ただ、残念なことは現在の地球の科学力では 、他の惑星の生命の確認もできず、「この宇宙 」の構造もわからず、「この宇宙」以外の別の 宇宙など見当もつかず、光速を超える移動法 など論外といった状態です。

「なるべく自然現象だけによって説明していく」 というのが科学的態度とされていますが、中に は人為的現象と考えたほうが合理的なのに、 ことさら理屈をこね回して自然現象としてかた を付けたがる傾向があります

この生命現象などもその一つです。

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