No40

意識は後天的に作られた回路で、無意識は先 天的に作られた回路である

ところで、前章で「意識」と「無意識」について 考えましたが、そのことと、脳の構造とはどの ような関係があるのでしょうか?

「意識」は「記憶」を連結させることによって生 じた後天的な回路図と考えることができます。

一方「無意識」は先天的に存在する回路を指 すものと考えられます。

生まれた段階で大脳に回路がまったくないと は考えられません。

もし、回路がないようでしたら、生命維持活動 はできません。

生命を維持するためにも先天的な回路がある ことは確かです。

ということは、「無意識」は遺伝情報の中に書 き込まれていなければなりません。

前章で述べたように、「意識」は「無意識」の一 部でしかありません。

「意識」や「無意識」には、コンピューターのRA M・ROMに相当する機能があります。

コンピューターではRAMの容量がかなりの比 率を占めていますが、人間の場合、一生かけ て作り上げた回路の数も、先天的な回路とくら べると、ごくわずかなものでしかないことが予 想されます。

人間の遺伝情報は原生生物だったころから、 現在にいたるまでの情報がすべて書きこまれ ていると考えられますから、わずか80年程度 で得られる情報は知れたものです。

実際のRAMは消去機能がありますが、人間 の場合脳細胞が破壊されない限り消去は起こ りません。

これだと記憶容量がオーバーして困るように 思われますが、人間のRAMにはかなりの余 裕があり、1生に得られる情報量の数100倍の 回路を作ることができます。

「意識」は先天的回路であるROM機能に後天 的情報であるRAMの記憶が結合して発生し たものと考えられます。

「無意識」は先天的なROM機能に加えて、「 意識」の中で潜在化してしまったRAM機能も 格納されています。

大多数の人の思考の実態は、徒然草の兼好 法師よろしく、「浮かんでは消えする由なしごと 」を何となく意識しているだけです

人間の一生の中で、かつて体験した記憶をた いした整合性もなく確認している時間、つまり ボンヤリしている時間は意外と多く、睡眠時間 も含めると全体の8割以上におよびます。

また、多重人格現象を説明するためにも、「無 意識」自体いくつもの独立した思考回路を持っ ていて、「意識」がまったく関係しないところで、 別の思考をしている可能性もあります。

人間の脳は充分には機能しておらず、まだ相 当の発達をする余地を残しています。

そして、「精神」が脳内部の合理的な電気の流 れであるならば、それ自体コンピューターで代 替できることになります。

自分の精神に関する情報をすべてコンピュー ターに入れてしまえば、肉体が消滅しても、精 神はコンピューター内部の電流という形で存 続できるのです。

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