次に八つの苦難の説明をしよう。

 この場合の苦難とは、宇宙知識を理解するのを邪魔する要因という意味だ。

 その内の三つは、この世にいる内に精神がさっきの三つ空間に行ってしまう場合。実際に行くのよりは幾分かはましだけれども、ものを教わる態勢にはまずなれないね。

 次は楽な状態。
 楽ならいいじゃないかと思うかもしれないが、人間は苦労しないと向上心も湧いてこないんだ。
 このイェンブー銀河系北部地域をクル州と言うんだが、あの辺りの星の人間はなまじ文明が進歩しすぎて生活が楽だから、それが禍いして未開なこのあたりよりも覚者になる人間は少ないんだ。

 次は体が丈夫で長生きな状態。
 これも一見よさそうだが、時間にゆとりがあると思うと安心してしまって進歩しないというのが人間の悲しい実態なんだ。
 ここよりも霊波動の高い空間はいっぱいあるけれども、そこにいて宇宙知識を極めた霊は意外と少ないんだ。

 次は身体に障害があって知能や知覚が閉ざされている場合。
 これは特殊な状態で、一種の修行には違いないが、この世で宇宙知識を充分理解することはできない。

 次は間違った情報を持つ傍系の宇宙霊とコンタクトしてしまった場合だ。
 なまじ自分は頭がいいと思っていると、この罠から抜け出せなくなる。誤った想念でも増殖するシステムがあると、それが独自の宇宙空間を創ってしまうんだ。

 次は、ちょうど覚者がいない銀河に生まれてしまった場合。
 これも修行の一部なんだが、当然教えてくれるものがいなければ宇宙知識を理解することはできない。

 わかったかな。これらを八つの苦難というんだ」
 ゴータマ師がこのように説明すると、聴衆から不安の表情が消えた。
 ゴータマ師は再び説法を始めた。

「さっき『規則守ること』が大切だと言ったけれどもけれども、規則を守らない人を非難したりするのはよくないことなんだ。
 非難するんじゃなくて、わからない人にはわかるように教えてやることが必要なんだ。
 これができる人が覚者になれば、規則を犯したという声が聞かれないフィールドを創ることになる。

『規則を守ること』によって『合理的進化への道』を実行することができるようになることはすでに話したね。
 これによって現われる理想の宇宙を君達のイメージに近付けて例えてみよう。
『若死にということがなく、財産に恵まれ、猥褻なことをする者もなく、言葉に真実がこもっていて、気候はいつも温和で、親しい人と離別することがなく、争いや訴訟もなく、言った言葉が必ず他人に利益を与え、妬んだり怒ったりする必要もなく、正確な見解を備えている人が誕生してくる』
 といった感じのフィールドになるんだ。

 さて、このあたりで今まで話したことをまとめてみよう。

 このように君達が綺麗な心になれば、正しい行動がとれるようになる。
 それができると、今度は宇宙知識を知りたくなる気持ちが生じてくる。
 その気持ちが深まると、心が宇宙知識と一体化してくる。
 そうなると宇宙知識の意のままに行動できるようになり、それによって得られた宇宙エネルギーを他者に振り分けられるようになる。
 最初は振り分けかたがわからなくてうまくいかないこともあるが、慣れるにしたがっていろいろなテクニックが身につくようになる。
 そのころには民衆の霊格も向上し、その時はフィールド内の宇宙知識も整備されて、それによって宇宙エネルギーも綺麗になる。
 そうなれば結果として宇宙全体が綺麗になるというわけだ」

 この時高弟のシャーリプトラはこのように思った。
「ボランティア霊の心が綺麗になった結果宇宙も綺麗になるのなら、尊師が昔ボランティア霊だった時はお心があまり綺麗でなかったのだろうか? 
 そして、またその影響でこの世界もこのように汚いのだろうか?」
 ゴータマ師はシャーリプトラの心を読み取って、彼に向かって話した。
「それなら君に尋ねるが、太陽や月は汚いものかね? 
 そして、目の不自由な人が太陽や月を見ないのはそれらが汚いからかな?」
「いいえそうではありません。それは目の不自由な人に原因があるのであって、日や月が汚れているわけではありません」
「シャーリプトラ君。この世界が汚く見えるのは、そのように住民に原因があって、そのために本当の世界の姿が見えないだけのことなんだよ。
 別に私がいるから汚いわけじゃないんだ。
 私のいるこの宇宙も本当は綺麗なんだけれども、まだ君にはそれを見るだけの力量がないだけだ」
 その時シキンという名のブラフマンがその場に居合わせていて、シャーリプトラに言った。
「シャーリプトラ君、君は尊師の高弟のくせに、この惑星が汚いなどと考えてはいかんよ。なぜといって、私の見るところ、尊師のいる地球が綺麗なことは、アカニシュタ星(イェンブー銀河の中枢星)の宮殿と同じだね」
 シャーリプトラにはシキンの姿が恰幅のよい中年のバラモンのように見えた。
 シキンはゴータマ師が菩提樹の木陰で宇宙知識を理解した時に、そのまま真空に移行しようとした師を思い止まらせ、教えを世に広めるよう説得した霊だった。
 しかし、そのようなことをシャーリプトラが知る由もなかった。

 シキンの言い方が高圧的だったので、いささか気分を害したシャーリプトラは抗弁した。
「アカニシュタ世界の話はうかがっておりますが、私がこの世界を見たところでは、ここにはゴミでできた岡や、死体や汚物を投げた川や、荒れ果てた土地や、砂・小石・土・石・禿山などや汚いものが満ちています」 
 シキンが哀れむように言った。
「君は、心にこだわりがあって、真空の目で世界を見てはいない。
 だから、この地球を見て、汚いと思っているに過ぎないんだよ。
 ねえシャーリプトラ君。ボランティア霊は世の全ての人に対して平等で、深く道を追究する心も綺麗だから、真空の目で見る時は、この宇宙の純粋さがわかるんだよ」

 シャーリプトラはシキンの言っている意味が理解できず、困惑の表情をした。
 その時、ゴータマ師は軽く爪先で大地を踏んだ。
 すると、たちまち、全宇宙が数千色の微妙なオーラで飾られた。
 セミナーに集まっていた聴衆は一様に驚いた。
 熟練したボランティア霊でさえもこれほど鮮明に宇宙全体を認識する機会は初めてだった。
 インド以外の場所を知らない一般聴衆は、宇宙の容量について認識することはできなかった。
 彼らの脳裏には空間が限りなく爆発したように感じられた。
 シャーリプトラにしても、知識としては知っていた三千乗数の大世界を初めて体験し、度胆を抜かれた。
 ゴータマ師の足元から発した宇宙エネルギーは瞬間にして胡坐を組んでいた聴衆の尾骨にあるチャクラ(身体内部にある霊エネルギーのセンター。脊柱から頭頂にかけて七つあり、上にあるセンターほど波動が高くなる)に吸収され、頭頂のチャクラを突き抜け天に戻っていったのだった。

 その間聴衆は覚者と同じ次元を体感したことになった。
 場内はしばらく沈黙し、その内どよめきが起こった。先程のエネルギーの残照が聴衆の尾骨のあたりに赤く輝いていた。
 ゴータマ師はシャーリプトラに向かって言った。
「君は今、この宇宙が厳かに飾られているのを見たことだろうね?」

「はい、確かに見ました。尊師。今まで見たことも聞いたこともないものですが、今この宇宙が厳かに飾られてことごとく顕れました」

 そこでゴータマ師はまだ動揺しているシャーリプトラにこう言った。
「この宇宙は本当はいつでもこのように綺麗なんだ。
 けれども、未熟な霊格の連中を宇宙知識へ導いてやらなければならない。
 だから、自分達の霊格を自覚してもらうために、さまざまな悪で汚れた宇宙を現わし出しているんだ。
 これも宇宙知識の一部だから、宇宙そのものであることには違いないけれどもね。
 例えて言えば、この太陽系の霊体は、太陽からエネルギーを得ている。
 けれども、その霊格に応じて吸収するエネルギーの質も高くなる。
 質の高いエネルギーほど綺麗なことは言うまでもない。
 だが、霊格の低い者が質の高いエネルギーを無理して食べると消化不良を起こして苦しむことになるね。
 消化不良を起こさないためには訓練するしかないんだ。
 こんなふうに、綺麗な食事ができれば綺麗な世界も見れるというものなんだよ。
 君達にはもっと綺麗な世界を見せてあげたいんだが、そのためにはそれなりの努力をしてもらう必要があるんだよ。」

 ゴータマ師が宇宙エネルギーを送り聴衆を宇宙知識に触れさせた時、クシティガルバとその友人の青年達は自分達の目的を確認して深い安心感を得た。
 まだボランティア霊に到らない多くの聴衆も目の前の現象がまやかしにすぎないことに気付き、真実を知りたいと思う気持ちがつのった。

写真提供

ネパール政府
インド政府観光局
NASA

その他

 




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